高田 賢三

1998年。高田賢三さんが初めてKENZOのフレグランスをつくりました。

その名は、「Ca sent beau」。フランス語で、「美しく香る」という意味を持つフレグランスです。

これは、賢三さんが洋服以外に出会った表現の場の始まりでもあり、同時に、KENZOフレグランスの歴史の始まりでした。

高田賢三さんは、色の魔術師と称され、1970年代、まだ、フランス人たちが日本という国の存在を知らない時代のパリで一世を風靡しました。その一方で、遊び心を忘れず、人にやさしく、どこか人間くさい、という人がらが印象的です。

高田賢三さんの文化服装学院時代の先生だった小池千枝先生は、賢三さんのことを、こんな風に語っています。

「賢三さんのさりげないセンスは、相手を尊敬する優しい気持ちに原点がある。その気持ちが着る人のことにも及んでいる。完全なデザインまでつくり込まずに、着る人の個性が加えられる余地を残している。これが賢三さんの感性なんですね。」

賢三さんが大切にしていたことの中に「Joy of Life」というのがあります。生活、人生を楽しむこと。

私たちKENZOスタッフが入社すると、まず、賢三さんがジャンプしている写真を見せられ、とにかく、人生を、そして、仕事でさえも、あくせくするのではなく、楽しもうではないか、という話を聞きます。当然のことながら、人生には喜怒哀楽が有り、紆余曲折が有り、人生を楽しむ、というのは、時に難しい。大人になっても、どこか純粋で朴訥としたところのあった賢三さんは、潜在的なところで、それを誰よりも繊細に感じていたかもしれません。でも、だからこそ、写真の彼はジャンプし、彼の去ったKENZOでは、そのクリエイションのベースに「Joy of Life」を息づかせようとしているのかもしれません。

KENZOの最初のフレグランスが生まれてから、今年で20年が経ちます。その年に掲げたKENZOのテーマは、「PEACE AND LOVE …, AND JOY」です。ピース&ラブ。そして、それを楽しむこと。KENZOロゴには、今も、賢三さんのスピリットが生きています。

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