アントニオ・マラス

KENZOレディス・ラインのアーティスティック・ディレクター。

マラスの服が織り成すのは、彼の故郷であるサルディーニャの風や色彩を感じさせる、豊饒で夢あふれる世界です。「物語を語る服」を作りたいと語る彼のものづくりは、KENZOのエスプリに通じています。

2005年春夏のコレクションの時のこと。

巨大なカーテンに覆われた、ひからびた大地を思わせるような舞台。

そこに突然、客席の間から十数人のアフリカンダンサーたちが這い上がってくる。

民族楽器の皮を叩く乾いた音を響かせながら、自由奔放に踊り、中央へゆっくりと集まる。

観客たちは、その地響きのようなリズムを全身に体感しながら、マラスの描く物語へと引き込まれていく。

コレクションでありながら、壮大な物語を感じさせた空間に、私達は、人の喜怒哀楽の、根源的なところを呼び起こされたような感覚に陥ったのでした。

それは、その演出が、単に観客を驚かせる装置なのではなく、彼の純粋であり、かつ、強烈な感性と、彼のクリエイションの根底にある「テーマ性」の表れだったからであるように思います。

の画像